古径邸の特徴は、晩年に見られる五十八の究極的に洗練された緊張感のようなシャープな印象とは異なり、骨太で素朴な佇まいの中に伝統的な技術の枠内ですっきりとした表現を心掛けていること。明朗性を追求し、無駄を省き、鴨居をできるだけ薄くする手法。その技術を確立するためにボルト貫を併用した鴨居の面中仕事は、当時の最新の技術として名高い。
今回の復原事業では昭和49(1974)年に惜しくも解体され、古径邸に隣接していたアトリエ(画室)も昭和13(1938)年当時の写真資料と図面をもとに復元しました。この画室は茅葺き屋根の農家を改造したものであり、その設計も五十八によるものである。